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揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
音楽、田舎暮らし、自然・環境、時事、ほかいろいろ。
どうぞ、ごゆっくり。
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子供の頃育った町では、放し飼いの犬がよく見られた。
ウチのお隣には薄茶色がかった白いふさふさの毛の犬が、そのお向かいには真っ黒で耳が垂れた犬がいて、どちらもつながれているのを見たことがなかった。
黒い子はずいぶん遠くまで出かける事があったが、毎日必ず戻ってきていた。
彼ら二匹は仲が良かった上に、飼い主さんにも町内の衆にもとても可愛がられていた。
町内の誰もが「コロ」と「クロ」のことを知っていた。
繁華街と隣接した京都市の中心部にしてそんなペット事情だった時代がなつかしい。
が、町内中で犬や猫の面倒を見る時代は、他人の子供の振る舞いは見て見ぬふりをする風潮の進行と共に、終わりを告げたように思える。
「町生動物」たちは、その後すべて玄関先や家の中へ押し込められ、自立していた犬や猫たちは次々に捉えられ、街角からその姿を消す。


── ── ── ── ── ── ──

さて、彼を迎える決意をしたわたしたちは、保護団体さんに彼の譲渡希望を正式に伝えた。
このときから、誰もがすんなり進むと考えていた譲渡のための打合せが始まった。

 そうして「お見合い」からちょうど半月が過ぎたある夜の事。
 団体さんからの電話が、信じ難い情報をもたらした。
 彼の足が治りつつあるというのだ。
 獣医さんから見放されていた右後ろ足が、何らかの治療を施したわけでもないのに、地面に着くようになってきているという。
 涙が出そうになった。
 いったい彼の身に何が起こったのか?
 それは我々にはわからない。
 家内「わたしたちは神様に試されたんだね」
 異論はなかった。


 シェルターにて



── ── ── ── ── ── ──

ところが譲渡交渉は諸事情により少々難航し、さらに一ヶ月が過ぎた。
五月、六月にしてはたいへん厳しい暑さと寒さの日が交互に続いていた。
シェルターのいちばん奥の薄暗がりにいる彼の身体が心配だった。
超多忙な団体さんからの連絡を待つ間、彼と心が通い合った瞬間が思い出されるたびに、胸が痛み焦燥感が募った。

案の定、彼に関するいくつかの良くない知らせが届いた。
発熱した、皮膚病に罹って毛がいっぱい抜け落ちた、胃腸を壊して食欲がない、おかげでとてもやせてしまった、とのことだった。
気が気ではなかった。
かかりつけ医になってもらうことを決めていた獣医さんに相談すると、一刻も早く迎えてやりなさいとおっしゃった。
団体スタッフさんは彼の体調が戻ってから譲渡したいとの気遣いをしてくれたが、わたしたちはどんな状態でもいいから一日も早く彼を連れてきてほしい、そう懇願した。

その後さらに紆余曲折の後、ようやく譲渡が決まったのは出会いから二ヶ月近くが経った頃だった。

── ── ── ── ── ── ──

よく晴れた暑い朝、彼は車に2時間ゆられ、保護団体の人たちに連れられてやってきた。
彼は痩せさらばえて、変わり果てた姿になっていた。
自慢のふさふさした尻尾は、付け根の毛がごっそり抜け落ちてプードルのようだ。
が、彼はそれでも驚くほどエネルギーに満ちていた。
完治した四つ足で団体の人を引きずるようにして、玄関へと続く斜面をずんずん登ってくる。
その姿は、二ヶ月前のあの足が不自由な彼ではなかった。
それは、インドやバリ島の路上で生き抜いていたたくましきやせ犬たちの姿を彷彿とさせた。

こうして彼は、自由に歩き回る黒き者「ノア」として、わたしたちの家族になった。
彼を命の危機から救い出し、これまで半年に渡って世話をしてわたしたちに引き合わせていただいた保護団体さんに改めて感謝した。
「よく来た、よく来た!」
万感込めて玄関先で抱き寄せたノアは、ずいぶん臭かった。
が、その臭いはなぜか懐かしく、ノアの愛おしさをいや増すものだった。

 おしまい。

17.07.23 ~ 30 記 







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管理人について

HN:
巴だ リョウヘイ
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非公開
職業:
揚琴・笛演奏屋 オカリナのセンセイ
趣味:
ほしい。
自己紹介:
 
演奏活動歴/揚琴、27年。オカリナ、16年。
活動範囲/全国の都心から山間地まで。
演奏場所/ホールからお座敷まで。オカリナは野外歓迎。
演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
演奏形態/独奏から異業種間共演まで。
所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)

コンタクト方法/上記のホームページ(HP)の「Contact」のページからどうぞ。

特 技/晴れ男であること。

オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。

京都府下農村在住。
雨乞い師見習い。
自然農見習い。
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