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揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
音楽、田舎暮らし、自然・環境、時事、ほかいろいろ。
どうぞ、ごゆっくり。
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毎日自力で食べ物を確保しなければならない野生動物にとって、後ろ足を、たとえ片方でも失うということは、もう生きていけないことを意味する。
が、犬はもともと人間によって作り出された動物だ。
自然界の一部として本能に従って生きる者でありながら、人間社会で生きることを定められている。
それゆえに、五体満足であっても自然界では独力では生きていけない一方で、人間界に在れば、たとえ不具になっても人間に助けられて生きていく事ができる。



しかしまたそうであるがために、保護者を失った犬は苛酷な運命をたどる。
そしてそれを見る我々は、犬が人の世の法の元では「物」にすぎないことを思い知らされる。
このような事情により、犬にとって人間は最愛の友にもなり、最悪の敵にもなりうる。
ではわたしたちは、いずれの種類の人間たることができるのか?

── ── ── ── ── ── ──

 散歩を終えて抱き寄せると、彼は全身を委ねてきた。
 わたしはこれまで犬に対しては、こんな風に抱き寄せようという気持ちになったことなど一度もなかったのだが、彼にはごく自然にそうできた。
 お互いの間に、なんの警戒心も不信感もなかった。
 彼が今どうして欲しがっているか理解できたし、そうしてやると心から喜んでいることが手に取るようにわかった。
 それは生まれて初めての、人間以外の生き物と心が通い合った体験だった。
 彼は目を閉じて喉をかすかに鳴らし、わたしの右手の人差し指を甘噛みしてきた。

家内を交えて彼と少し対話をした。
「おすわり」と言うと、おすわりをした。
いたずら半分で「お手」と言うと、お手をした。
「へーっ、お手できるの?!」
おやつのビスケットを差し出すと、ぺろっと5個も平らげた。
「おまえ、ごはんのフードは残してるやないか」
と言っても澄ました顔をして次を待っている。

「待て」も理解できる。
まっすぐにこちらの目を見る。
家内がスキンシップすると、ついには仰向けに裏返って「へそ天 ※」のポーズとなった。
(※ 主人への完全服従を表すポーズと言われている)



(へそ天。画像処理でパンツをはかせてあります)




こんな風に人なつこくてしつけも行き届いた彼がなぜここにいるのか。
彼はますます魅力的になると同時に、ミステリアスになっていった。

わたしたちが彼と信頼関係を築けたと喜んだそのとき、団体の人から、彼が抱える健康上のもうひとつの問題が告げられた。
ただちに命に別状があるわけではないが、持病があるそうなのだ。

── ── ── ── ── ── ──

さて、しきりに彼の譲渡を勧める保護団体の人の笑顔に見送られ、わたしたちはシェルターを辞した。
里親として彼を譲り受けるかどうか、その日は即答できなかった。
足の不具合と病気への複雑な思いが即答をためらわせたのだった。
帰りの車中で、早速我々は話し合った。

「ウチの周辺は坂道と斜面ばかりだ。あの身体で暮らしていくのはきついのではないか」
「と言ってあのままあそこにいて、他に貰い手が現われるだろうか」
「その公算はきわめて低かろう」
「そういう意味でも貰ってあげたい」
「せっかく命拾いしたのだから、全うに暮らせるようにしてやりたいものだ」
「ちょっとでも幸せにしてやらないと」
「あんないいヤツいないし」
「あんないい子いないし」

── ── ── ── ── ── ──

数日後、結論を出した。
彼を迎えようということになった。
あの短い「お見合い」の時間での、彼と心が通い合った体験が、わたしたちの決断の礎だった。
これまで彼の世話をしていたボランティアスタッフの人のアドバイスも、決断を後押しした。
我が家の周囲の坂道や斜面は土道や草で覆われた面が多いので足にやさしい、犬は意外に不具を苦にしない、体力的にもたぶん問題ないということだった。
もちろん、シカ・イノシシ・サル対策はほぼ絶望的だ。
(※ そもそもわんこを飼おうと思った動機のひとつに獣害対策があった/8/7 追記)
が、わたしたちは、心やさしい彼といっしょに楽しく暮らせればそれでいいと思った。
足は、通院やリハビリをするなどして少しずつでもよくなって、いつかせめて地面に着くようにでもなればいいとの願いを持ち続けることにした。

── ── ── ── ── ── ──

 彼には名前がなかったが、間もなく自然に「ノア」に決まった。
 各国にあるノアという言葉の「黒」「歩き回るもの」「ムーブメント」「休息」「自由」との意味を込めた。
 それはわたしたちの、彼が苦難の日々を脱してゆっくり休息し、今は足が不自由でもいつか少しでもよくなり、自由に歩き回れるようにとの願いを込めることだった。

── ── ── ── ── ── ──
 つづく。
 

17.07.23 〜 30 記 

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管理人について

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巴だ リョウヘイ
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職業:
揚琴・笛演奏屋 オカリナのセンセイ
趣味:
ほしい。
自己紹介:
 
演奏活動歴/揚琴、27年。オカリナ、16年。
活動範囲/全国の都心から山間地まで。
演奏場所/ホールからお座敷まで。オカリナは野外歓迎。
演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
演奏形態/独奏から異業種間共演まで。
所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)

コンタクト方法/上記のホームページ(HP)の「Contact」のページからどうぞ。

特 技/晴れ男であること。

オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。

京都府下農村在住。
雨乞い師見習い。
自然農見習い。
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