揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
音楽、田舎暮らし、自然・環境、時事、ほかいろいろ。
どうぞ、ごゆっくり。
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#596 落書考
ごぶさたいたしました。
自然の風景というものは、絶えず少しずつ変化しつづけている。それが、あるときは劇的に変化する。ひとつは台風や地震などの自然の巨大なエネルギーの放出時。もうひとつは、人間の手が入ったときだ。知らぬ間に人間の手によってなされた風景の変化に驚かされることがある。
ごぶさたいたしました。
自然の風景というものは、絶えず少しずつ変化しつづけている。それが、あるときは劇的に変化する。ひとつは台風や地震などの自然の巨大なエネルギーの放出時。もうひとつは、人間の手が入ったときだ。知らぬ間に人間の手によってなされた風景の変化に驚かされることがある。
今の家に引っ越してきて、今月末で五年になる。ここを選んだ理由のひとつが、ここから見える風景だった。東に望むなだらかな山々は、まったく平凡ではあるが、心をなごませる何かを持っていた。
で、その風景の平凡さを際立たせているもののひとつに、山の中腹を走る道路があった。その道路は、美しい山を上下に分割していた。日本の至る所で見かける風景だ。
平凡さを演出しているものはまだある。視界を横切る電線だ。それは山の稜線とほぼ平行に走り、山そのものだけではなく、視野に入る美しい風景すべてを上下に分割していた。これまた、日本中で目にする光景だ。
それでもワタシは引っ越してきた当時、ここからその山々までの間に広がる森や木立が構成する豊かな空間がかもし出すやすらぎと、四季を通じて変化するであろう山々の色合いに期待したものだった。そして、その期待は十分に満たされた。引っ越してきて以来時間があれば、夕刻になると、ウチの地所からその山々が見通せるいくつかの特等席(ワタシにとってだけの特等席であるにちがいないが)に座っては、一日を振り返る時間を持っている。が、視野を分割する電線を秘かにぶった切りに電柱によじ上る衝動に、ときどき駆られていることを告白させていただく。
豊臣秀吉は、風景の変化が人心に与える影響を軍事的に利用した。秀吉は、敵の陣中から見える山腹に、たった一夜にして城を築き上げ、敵の度肝を抜き戦意を喪失させてしまった。もちろんこれにはタネがあった。山中で秘かに建築を進め、城が大方出来上がった頃に、城の周囲の木を一斉に切り払ったのだった。それが遠方の敵から見れば、たった一夜にして城が建ったように見えたのだ。秀吉の「一夜城」の逸話のひとつだ。
さて、ずいぶん気候が不安定だった今年の三月のある日、いつもの特等席に座ってぼんやりといつもの山々を見やっていると、そのふもとに見なれないものを発見した。いつの間にか、ああ、まことにいつの間にか、二本の鉄塔が建っているではないか。
鉄塔というものは、建てる現地で組み上げていくのではなく、おそらく大方を組み立ててから運んで、現地でせいのっと立てるのだろう。だからして、気づかぬ間、わずかの間に立ち上がった二本の鉄塔は、ワタシには一夜城のように思えた。またそれらは、ワタシの平凡でささやかな宝物の風景画に知らぬ間に書き込まれた落書きのようでもあった。
落書きをした人々を責めることはできない。どうやらケイタイ用のアンテナ塔らしい鉄塔。ワタシもその恩恵にあずかっている一人なのだから。一年前までは、ウチの家の中、そしてマイ田んぼ付近はケイタイの圏外だった。それが、その後近くに新しいアンテナが立ったおかげで、田んぼと家との通信が可能になり喜んだものだった。が、そのせいで、どこかの風景が損なわれている。ワタシもまた、誰かが愛する風景画に落書きをすることを喜んだ一人なのだ。
で、その風景の平凡さを際立たせているもののひとつに、山の中腹を走る道路があった。その道路は、美しい山を上下に分割していた。日本の至る所で見かける風景だ。
平凡さを演出しているものはまだある。視界を横切る電線だ。それは山の稜線とほぼ平行に走り、山そのものだけではなく、視野に入る美しい風景すべてを上下に分割していた。これまた、日本中で目にする光景だ。
それでもワタシは引っ越してきた当時、ここからその山々までの間に広がる森や木立が構成する豊かな空間がかもし出すやすらぎと、四季を通じて変化するであろう山々の色合いに期待したものだった。そして、その期待は十分に満たされた。引っ越してきて以来時間があれば、夕刻になると、ウチの地所からその山々が見通せるいくつかの特等席(ワタシにとってだけの特等席であるにちがいないが)に座っては、一日を振り返る時間を持っている。が、視野を分割する電線を秘かにぶった切りに電柱によじ上る衝動に、ときどき駆られていることを告白させていただく。
豊臣秀吉は、風景の変化が人心に与える影響を軍事的に利用した。秀吉は、敵の陣中から見える山腹に、たった一夜にして城を築き上げ、敵の度肝を抜き戦意を喪失させてしまった。もちろんこれにはタネがあった。山中で秘かに建築を進め、城が大方出来上がった頃に、城の周囲の木を一斉に切り払ったのだった。それが遠方の敵から見れば、たった一夜にして城が建ったように見えたのだ。秀吉の「一夜城」の逸話のひとつだ。
さて、ずいぶん気候が不安定だった今年の三月のある日、いつもの特等席に座ってぼんやりといつもの山々を見やっていると、そのふもとに見なれないものを発見した。いつの間にか、ああ、まことにいつの間にか、二本の鉄塔が建っているではないか。
鉄塔というものは、建てる現地で組み上げていくのではなく、おそらく大方を組み立ててから運んで、現地でせいのっと立てるのだろう。だからして、気づかぬ間、わずかの間に立ち上がった二本の鉄塔は、ワタシには一夜城のように思えた。またそれらは、ワタシの平凡でささやかな宝物の風景画に知らぬ間に書き込まれた落書きのようでもあった。
落書きをした人々を責めることはできない。どうやらケイタイ用のアンテナ塔らしい鉄塔。ワタシもその恩恵にあずかっている一人なのだから。一年前までは、ウチの家の中、そしてマイ田んぼ付近はケイタイの圏外だった。それが、その後近くに新しいアンテナが立ったおかげで、田んぼと家との通信が可能になり喜んだものだった。が、そのせいで、どこかの風景が損なわれている。ワタシもまた、誰かが愛する風景画に落書きをすることを喜んだ一人なのだ。

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管理人について
HN:
巴だ リョウヘイ
性別:
非公開
職業:
揚琴・笛演奏屋 オカリナのセンセイ
趣味:
ほしい。
自己紹介:
演奏活動範囲/全国の都心から山間地まで。
演奏場所/ホールからお座敷まで。オカリナは野外歓迎。
演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
演奏形態/独奏から異業種間共演まで。
所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)
コンタクト方法/上記のホームページ(HP)の「FAQ & Form」のページからどうぞ。
特 技/晴れ男であること。
オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。
2018年、京都府下農村から大阪府下住宅街に移住。
今も雨乞い師見習い。
今も自然農見習い。
ノアのおとうちゃん。
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