揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
音楽、田舎暮らし、自然・環境、時事、ほかいろいろ。
どうぞ、ごゆっくり。
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#254 カルカッタの夕暮れは一心不乱だった
クワイ川橋のたもとで買った竹笛をリュックに詰めて、タイはバンコクからインディアン・エアラインという危なっかしい飛行機で5時間、インドはカルカッタ(現コルカタ)に降り立った。カルカッタに始まったインドの旅で見たものを書く誘惑にかられるが、それを始めると何日かかるかわからない。で、音楽との小さな、しかし忘れがたい出会いだけを書くことにした。あの国には、すばらしい音楽があふれているのだ。
インドで最初に聴いた音楽は、その存在すら知らなかった音楽だった。
クワイ川橋のたもとで買った竹笛をリュックに詰めて、タイはバンコクからインディアン・エアラインという危なっかしい飛行機で5時間、インドはカルカッタ(現コルカタ)に降り立った。カルカッタに始まったインドの旅で見たものを書く誘惑にかられるが、それを始めると何日かかるかわからない。で、音楽との小さな、しかし忘れがたい出会いだけを書くことにした。あの国には、すばらしい音楽があふれているのだ。
インドで最初に聴いた音楽は、その存在すら知らなかった音楽だった。
カルカッタに着いたのは、陽が暮れかかった頃だった。とてつもなく大きく、ぼーっとかすんだ太陽が沈み行く深い灰色の空の下、苦労してつかまえたタクシーでサダルストリートという安宿街へ到着。安ホテルを物色して、何軒かで断られ、疲れ果ててようやく転がり込んだぼろホテルに荷物を置き、夕闇せまるカルカッタの街へ空腹を満たしにでかけた。
と、どこからか小さな鐘を乱打する音と大勢の歌声が聞こえてくる。ワタシは吸い寄せられるようにその歌声を目指していた。その歌声は、自分が初めて降り立ったこの国の、この何もかもが信じがたい空気の喧噪の街に着いてまだ数時間しかたっていないことや、今ホテルからどの方角にいるのかなど、すっかり忘れさせてしまっていた。人とリキシャと牛でごった返す表通りから路地を抜けて、歌声が聞こえてくる裏通りへ向かった。しだいに近づいてくるその歌声は、力強いというよりも、ほとんど一心不乱のものに思えた。
裏通りに出ると、傷だらけの家や背の低い古びたビルが立ち並ぶ一角の低い塀の向こうに空き地があるようで、大勢の歌声はそこから聞こえてくる。道行く人々がその歌声にはなんの反応も示さないところを見ると、どうやらそれはめずらしいものではないようだ。小気味よいテンポで単調なリズムを打ち続けるたくさんの小鐘の音と、聴いたことがない節回しの歌、そしてそれらを讃えるような力強く整然とした手拍子は、ワタシの血肉を沸き立たせた。ワタシはそっとのぞいてみた。
すると、空き地の土の上に二十人ばかりの汚い身なりの男たちが車座になってすわりこみ、ある者は小鐘を、ある者は手拍子を打ちながら、やはり一心不乱に歌い続けている。歌はコーラスでもなんでもない。同じ単旋律を延々と歌っている。
その場全体が高揚した有様は酒が入っているようにも見えるが、ヒンドゥーとムスリムのこの国では飲酒はご法度だからそうではないはずだ。歌は次第に高まったかと思えばゆるやかに沈静し、再び高揚することを繰り返している。何人かが外国人のワタシに気づいてこちらに目を向けたが、それ以上の関心は示さない。すぐに歌に心をもどして、一心不乱に歌い続ける。
その歌は永遠につづくかと思えた。その場の有様は、明らかに宗教的なものだった。
この歌が「バジャン」と呼ばれるヒンドゥーの祈りの歌のひとつで、歌っていた男たちは同郷の貧しい出稼ぎ労働者たちであることがわかったのは、ずいぶん後のことだった。その宴は、毎夕催されていたのか決められた日に行なわれていたのかはわからない。いずれにしても、町なかにこのようなすばらしい音楽があたりまえのように溶け込んでいる有様は、ワタシに衝撃を与えた。
それから十年近くを経たころ、ある日本人からあるバジャンの楽譜をもらった。たった12小節のその歌はワタシの心をわしづかみにしてしまった。そのバジャンをオカリナ演奏用に編曲してライブで演奏したのは、それからさらに数年の年月を経てからだった。その際、インドで出会った最初の音楽であるカルカッタのあのバジャンの様子が思い起こされていたことは言うまでもない。
と、どこからか小さな鐘を乱打する音と大勢の歌声が聞こえてくる。ワタシは吸い寄せられるようにその歌声を目指していた。その歌声は、自分が初めて降り立ったこの国の、この何もかもが信じがたい空気の喧噪の街に着いてまだ数時間しかたっていないことや、今ホテルからどの方角にいるのかなど、すっかり忘れさせてしまっていた。人とリキシャと牛でごった返す表通りから路地を抜けて、歌声が聞こえてくる裏通りへ向かった。しだいに近づいてくるその歌声は、力強いというよりも、ほとんど一心不乱のものに思えた。
裏通りに出ると、傷だらけの家や背の低い古びたビルが立ち並ぶ一角の低い塀の向こうに空き地があるようで、大勢の歌声はそこから聞こえてくる。道行く人々がその歌声にはなんの反応も示さないところを見ると、どうやらそれはめずらしいものではないようだ。小気味よいテンポで単調なリズムを打ち続けるたくさんの小鐘の音と、聴いたことがない節回しの歌、そしてそれらを讃えるような力強く整然とした手拍子は、ワタシの血肉を沸き立たせた。ワタシはそっとのぞいてみた。
すると、空き地の土の上に二十人ばかりの汚い身なりの男たちが車座になってすわりこみ、ある者は小鐘を、ある者は手拍子を打ちながら、やはり一心不乱に歌い続けている。歌はコーラスでもなんでもない。同じ単旋律を延々と歌っている。
その場全体が高揚した有様は酒が入っているようにも見えるが、ヒンドゥーとムスリムのこの国では飲酒はご法度だからそうではないはずだ。歌は次第に高まったかと思えばゆるやかに沈静し、再び高揚することを繰り返している。何人かが外国人のワタシに気づいてこちらに目を向けたが、それ以上の関心は示さない。すぐに歌に心をもどして、一心不乱に歌い続ける。
その歌は永遠につづくかと思えた。その場の有様は、明らかに宗教的なものだった。
この歌が「バジャン」と呼ばれるヒンドゥーの祈りの歌のひとつで、歌っていた男たちは同郷の貧しい出稼ぎ労働者たちであることがわかったのは、ずいぶん後のことだった。その宴は、毎夕催されていたのか決められた日に行なわれていたのかはわからない。いずれにしても、町なかにこのようなすばらしい音楽があたりまえのように溶け込んでいる有様は、ワタシに衝撃を与えた。
それから十年近くを経たころ、ある日本人からあるバジャンの楽譜をもらった。たった12小節のその歌はワタシの心をわしづかみにしてしまった。そのバジャンをオカリナ演奏用に編曲してライブで演奏したのは、それからさらに数年の年月を経てからだった。その際、インドで出会った最初の音楽であるカルカッタのあのバジャンの様子が思い起こされていたことは言うまでもない。

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管理人について
HN:
巴だ リョウヘイ
性別:
非公開
職業:
揚琴・笛演奏屋 オカリナのセンセイ
趣味:
ほしい。
自己紹介:
演奏活動範囲/全国の都心から山間地まで。
演奏場所/ホールからお座敷まで。オカリナは野外歓迎。
演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
演奏形態/独奏から異業種間共演まで。
所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)
コンタクト方法/上記のホームページ(HP)の「FAQ & Form」のページからどうぞ。
特 技/晴れ男であること。
オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。
2018年、京都府下農村から大阪府下住宅街に移住。
今も雨乞い師見習い。
今も自然農見習い。
ノアのおとうちゃん。
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演奏場所/ホールからお座敷まで。オカリナは野外歓迎。
演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
演奏形態/独奏から異業種間共演まで。
所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)
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