#146 さとわのほかげ

#146　さとわのほかげ

　9月27日の午後、大阪のどまんなかへ揚琴をかついで行ってきた。ひさしぶりにＣＭ音楽の録音に参加するためだ。きょうのところは、某メジャー系女性ヴォーカリストのサポートであったことだけをおしらせ。詳細は放映開始日が近付いてからということで。

　エレベーターを降りてスタジオのミキシングルームに入ると、関係者総勢10数名がずらりと並んですわっておられた。みんなにこにこしておられる。ワタシも負けずににこにこした。

　が、いきなりダブルパンチが待っていた。
　レコーディングルームは、なんという冷房の効き方。まるでスーパーの生鮮食品売り場だ。空気は乾き切っている。まだまだ残暑がきびしい道のりを2時間も走ってきた揚琴のチューニングが危ない。
　さらに、チューニングの基準値を聞いて、脇の下を汗がつたった。
「よんよんに（442Ｈｚ＝ヘルツ）でいいですね」と、当然のように言うワタシ。
「よんよんぜろ（440Ｈｚ）でお願いします」と、チーフエンジニアのＴ氏。しまった。今朝からいっしょけんめい442に合わせてきたではないか。
　教訓。チューニングの基準値はあらかじめ問い合わせて確認しておきませう。

　先に音録りをしているはずの歌い手さんの到着が遅れているとのことで、巴だ先攻となり、ばたばたとチューニングを始める。エアコンショックの上に、今から短時間で121本すべての弦を2Ｈｚ下げねばならない。
「ねばならない、ねばならない・・・」
　と唱えながら作業を急いだ。ねばねば教だ。

　が、運良くものの20分でチューニング完成。さすが20年のキャリアだ。自分で言うな。

　ここで歌い手さん到着。ワタシは調製室で待機となる。あー、せっかくの「よんよんぜろ」がまた遠のいていく。またまたねばねば教の心だ。
　歌は「朧月夜」の2番。「里輪（さとわ）の火影（ほかげ）も森の色も・・・」いい歌声だ。いい感覚だ。さすがだ。流石菩薩だ。

　1時間後、「お疲れさま」と歌い手さんを送り出して再び揚琴の前に。チューニングを再度ねばねばして、いよいよ本番。ヘッドホンをかぶり、先に収録されたギターと歌を聴きながら揚琴を奏でた。

　たしか3回録ってＯＫをいただいた。録れたての音をすでにできあがっている映像に合わせて見ると、なかなか感動的だ。美しい日本の田園風景とともに流れる朧月夜の豊かな歌声とおしゃれなギターと田舎者の揚琴。まことにいい仕事をさせていただいた。

　で、このＣＭの放映開始予定日は・・・あっ、また聞くのを忘れて帰ってきてしまった！！

　おしまい。　

いてててて。

2007/09/29 (Sat) 揚　琴 TRACKBACK() COMMENT(0)