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揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
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#589 オール虚心

 カラオケ用から盗聴用まで、マイクにはいろんな種類がある。話は少し専門的になるが、マイクには指向性というものがある。音を拾う範囲の広さのことだ。ほぼ真ん前の方向の音だけを拾うものを単一指向性、あらゆる方向の音を拾うものを無指向性という。楽器のライブや録音で使うものは、単一指向性や超単一指向性のマイクだ。その方が周囲の不要な音を拾いにくいからだ。

拍手[1回]


 マイクはスピーカーなどの再生機器とセットで存在している。が、それらがいくら高性能になったところで、どうしても人間の耳が聴いている「世界」を再現することはできない。何がちがうかと言えば、立体感だ。
 また、同一線上に並べられた二個のスピーカーが作り出す音場は、当然と言えば当然だが、すべての音が同一平面上に並べられている。それゆえに、スピーカーから出てくるすべての音は「同じ存在感を持って」聴こえてくる。つまり、ホオジロのさえずりも周囲の騒音もずっと遠くの電車の音も、いっしょくたになって聴こえてくるってことだ。一方、人間の耳は、実際の音の中から、ごく自然に特定の音を拾い上げて、その音の方向や距離や種類に注意を集中することができる。一般には「聴く」とは、このように特定の音に注意を集中することを言いますな。

 さて、本題。聴くこととは、音に対する注意の集中であるとばかりは言えない。別種の聴き方もある。それは、言わば「全方向的聴覚」とでも言えるような聴き方だ。
 ホオジロのさえずりも確かに聴いているのだが、それだけではなく周囲の騒音もずっと遠くの電車の音も共に聴いている状態だ。それはあたかも、スピーカーによって同一平面上に並べられた音をそのまま受け取るような聴き方だ。
 マイクに例えるならば、通常の聴き方が単一指向性マイクで、「全方向的聴覚」は無指向性マイクで音を拾うようなものだ。

 合奏をする場合、この両方の聴き方が必要になる。いや、むしろ、全方向的聴覚の方がはるかに重要な役割を占めている。もし単一指向性的聴き方しかしなければ、聴こえてくるのは自分の音だけになるだろう。が、他の人の音をどれくらい正確に具体的に聴き取るかが、良い合奏になるかどうかの分かれ目だ。

 では、全方向的聴覚を磨くにはどうすればよいか。
 単一指向性的聴覚にあって全方向的聴覚にないものがある。それは思考ないし意思だ。特定の音は、それを聴きたい、聴くべきだという思考、聴こうとする意思がなければ聴こえてこない。ということは、その思考・意思をちょっと横へ置いておけば、全方向の音が聴こえてくるということになる。

 このような聴き方というか、その背景になっている考え方は、一般的なモラルに反するとも言える。一般には、何かに集中すること、明確な意思を持って行為することを良しとしているように思えるからだ。が、その良き精神が、全方向的聴覚、それによる良き合奏のさまたげになっている場合があることをどう考えるか。

 実は全方向的聴覚というものは、聴覚をどう扱うかというよりも注意力の使い方なのだ。多数の人の中にいて、その場その時の人々の気分や思いを敏感に感じ取るには、注意力が必要だ。それと同じ種類の注意力を聴覚に当ててやれば、全方向的聴覚が得られるだけのことだ。ひとところに留まらない、柔軟で融通無碍な注意力、どこかで安く売ってないでせうか。
 前便のテーマだった「耳を澄ます」とは、こういうことを言うのだと、ワタシは思っている。耳を澄ますイコール、心を澄ますということに他ならない、と。虚心に聴くことで、あらゆる音や「気配」までが聴こえてくる。

「聴き上手」ってそういうことだったのかって今頃わかった、ってか。それはよかった。

 おしまい。 
10.03.19 記 
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巴だ リョウヘイ
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所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)

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特 技/晴れ男であること。

オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。

2018年、京都府下農村から大阪府下住宅街に移住。
今も雨乞い師見習い。
今も自然農見習い。
ノアのおとうちゃん。
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